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  • 今注目されているAIの学習技術、ディープラーニングとは?

    2016.12.27
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    introduction

    これまで人工知能のブームは2回到来し、現在は第三次人工知能ブームだと言われて います。このブームを牽引しているのがディープラーニング(深層学習)の存在です。 ディープラーニングの出現で出力データから抽出できる情報の精度が高くなったと 言われていますが、従来の機械学習とどういった点が異なるのでしょうか。 今回はディープラーニングについて紹介します。

    目次

    1-1. 機械学習の概要
    1-2. ディープラーニングの概要
    1-3. 間違いやすい「機械学習」と「ディープラーニング」
    2-1. ディープラーニングの仕組み解説
    3-1. 注目のキッカケ
    3-2. 進む実用化の背景
    3-3. 現在の実用状況
    4-1. まとめ

    1-1.機械学習の概要

    • 機械学習は人工知能の研究課題の1つで、人間の学習能力を コンピューターで再現する技術のことです。 サンプルとなるデータをもとに、人工知能のプログラム自身 がルールや知識を学習する仕組みになっています。 ここでいう学習とは「分ける」ことです。対象となるもの が飲み物か食べ物か、正誤で分けます。 正誤の精度、正解率を上げることが学習となります。

    1-2.ディープラーニングの概要

    ディープラーニングは広い意味で、多層のニューラルネットワークを用いた機械学習技術の1つです。学習とは分ける ことと説明しましたが、「分ける方法」は多数存在します。機械学習が行う代表的な分け方の1つが、前述のニューラ ルネットワークです。ニューラルネットワークは人間の脳をモデルにして、入力層、隠れ層、出力層の3種類の層から 成ります。入力層から出力層まで学習する過程を重みづけで変化させて、最適な値を出力するように調整します。

    従来は情報を3層以上掘り下げると、学習の結果が悪くなり多層にすることが難しかったため、この3層で構成されて いました。しかし最近では、隠れ層を何層も重ねて深く掘り下げて学習することが可能になりました。これがディー プラーニングです。学習する過程が増えたことで、ニューラルネットワークよりも精度の高い値を出力する注目度の 高い技術です。

    1-3.間違いやすい「機械学習」と「ディープラーニング」

    機関学習とディープラーニングの違いは、「特徴量」がキーワードになります。特徴量とは機械学習の入力に使う変数の ことで、この値が対象の特徴を定量的に表します。機械学習では特徴量を自ら考え出すことが難しいため、人間があら かじめ考えて組み込みます。

    例えば荷物の種類を求めたい場合、重さ・大きさ・割れ物かどうかという特徴量を設定するのではないでしょうか。 ここで見当違いな特徴を当てはめると、荷物の種類を求めることができません。適切な特徴を見極めることがコンピュー ターは苦手で、人間の方が長けているのです。

    しかしディープラーニングはコンピューター自らが学習し、特徴量を作り出すことができます。人間が特徴量を示す必要 がなくなり、コンピューター自らできることの幅が広がりました。

    2-1.ディープラーニングの仕組み解説

    簡単に説明すると、ディープラーニングは情報の階層を何段もディープに掘り下げる仕組みです。

    1-2でも説明したように、この層は入力層、隠れ層、出力層から成ります。ディープラーニングではこの隠れ層を何層にも掘り 下げて、隠れた特徴量を得ることができるのです。
    2段目の隠れ層には、1段目の隠れ層で得られたものを、さらに組み合わせたものが出てきます。そのため掘り下げるほどより 質の高い特徴量を獲得でき、出力される値がより精度の高いものになるのです。

    3-1.注目のキッカケ

    注目のきっかけは2012年、世界的な画像認識のコンペティション「ILSVRC(Imagenet Large Scale Visual Recognition Challenge )」でのことでした。東京大学、オックスフォード大学など名だたる研究機関が開発した人工知能を抑えて、初参加 のトロント大学が開発したSuper Visionが圧勝したのです。

    • このコンペの内容は、画像に写っているものをコンピューター が識別し、正解率の高さを競うというものでした。他機関の人 工知能がエラー率26%の攻防の中、Super Visionは驚異のエ ラー率15~16%。1年かけてようやくエラー率が1%下がるとい う世界だったため、異例の事態として業界に衝撃が走りました。

      勝因はトロント大学のジェフリー・ヒントン教授が中心になっ て開発した機械学習方法ディープラーニングです。 ヒントン教 授はディープラーニングの研究を2006年から始めていましたが、 今回の勝利で実力は確固たるものとなり大きく注目を集めまし た。

    3-2.進む実用化の背景

    上述の画像認証コンペILSVRCをきっかけに、ディープラーニングの実用化が進みます。翌年以降、GoogleFacebookといった 大手企業が人工知能研究に力を入れ始めました。
    GoogleはコンペでSuper Vision開発に取り組んだトロント大学のジェフリー・ヒントン教授を迎え入れ、研究を進めています。 一方でFacebookは2013年に、世界3箇所に人工知能研究所を設立しました。 こういった大手企業の動きは人工知能およびディープラーニング活用の注目度を高め、実用化を後押しした大きな要因です。

    3-3.現在の実用状況

    新しいものはまず、研究開発がされたというニュースが広がり、それからしばらく遅れて実用化されるものです。
    ディープラーニングが大きく注目されて4年。現在あらゆる方法で実用化が進んでいます。

    ■音声認識
    • 音声認識は人間の声などをコンピューターに認識させて、話した文字列に変換、 音声を識別する機能です。SiriCortanaのように、コンピューターと会話ができ るようになり音声認識の認知度が上がりました。

    例えば米IBMは人工知能研究をけん引する会社の1つで、同社開発のコグニティブシステム「Watoson」が2011年半ば、米 クイズ番組「ジョパティ!」でクイズ王を破り話題になりました。 この企業が提供するのは、会話から文字を書き起こすWatson Speech to Textサービスです。コールセンターの会話の書き 起こしなど多岐に渡って活用されています。

    参考 : Watson Speech to Text : http://www.ibm.com/smarterplanet/jp/ja/ibmwatson/developercloud/speech-to-text.html
    ■画像認識
    • 画像認識は画像データの内容を分析して、形状を認識する技術です。 画像の対象物を抽出して識別することは人間にとって簡単なことですが、 コンピューターにとって複雑な作業でした。しかしディープラーニングに よって特徴を深い層まで抽出することが可能になり、画像認識は飛躍的に 進歩して実用化が進んでいます。

    シリコンバレーに拠点を置くMetaMindは企業向けに人工知能ソリューションを提供しています。同社が提供する画像認識 エンジン「Vsion」は写真に写っている対象物を2万2000の区分に分類することが可能です。
    解析結果の左側は入力した写真で、右側には結果の詳細が表示されます。結果の詳細には、「猫」「ライオン」「トラ」な ど対象物の候補と、パーセンテージで示された自信度がでます。例えば犬の写真を入力すると、「柴犬」や「秋田県」など 犬種まで表示される精度の高さです。

    参考 : MetaMind : http://metamind.io/
    ■自然言語処理
    • 自然言語処理は、人間が日常的に使っている自然言語をコンピューターで処理する技術です。 従来から機械翻訳に使われており、なじみ深いのではないでしょうか。
      2016年11月にはGoogle翻訳がニューラルネットワークを取り入れて精度が向上したと話題に なったばかりです。

      他にも画像認証で紹介したMateMindが、「Language」という財務諸表などを理解しリスク を査定する自然言語解析エンジンを提供しているなど、実用度の高い技術です。

    参考 :Google Japan Blog : https://japan.googleblog.com/2016/11/google.html
    ■レコメンデーション・システム
    • レコメンデーション・システムは各ユーザーの行動から、興味を持つと予想されるものを 提示する技術です。
      Microsoftが提供するRecommendationsは顧客の行動を基にしたデータから、顧客にお 勧めの品物を提供します。コンバージョン率向上につながり、マーケティングで非常に有 効なシステムです。

      Webマーケティングでは顧客へのパーソナライズの重要性が叫ばれているため、今後さら に取り入れる企業が増加すると予想されます。

    参考 : Microsoft : https://azure.microsoft.com/ja-jp/services/cognitive-services/recommendations/

    4-1.まとめ

    ジェフリー・ヒントン教授がSuper Visionをお披露目した2012年のコンペティション以降、ディープラーニン グの注目度が急激に上昇し、Googleといったネット界の大手企業が投資を開始しています。
    入力データから特徴量を抽出できるディープラーニングは、人工知能研究の大きなブレークスルーと言われて おり、さらに様々な業界で実用化が進むでしょう。